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京都大学附属図書館ラーニング・コモンズを巡る協働の経験から

2014年度第20回FDフォーラム報告集「【第13分科会】大学図書館からの学習支援の工夫~連携を視座に~ 」 pp.389-394

大学図書館による学習支援のひとつの様態として、多くの大学でラーニング・コモンズの整備が進みつつある。京都大学附属図書館内に20144月にオープンしたラーニング・コモンズは、その企画・設計を図書館員のみで行うのではなく、教員、学生との協働により行ったことが特徴としてあげられる。今回の発表では、協働に至る経緯、協働の実際、協働における課題と今後の展望を述べることで、大学図書館におけるラーニング・コモンズを媒介にした連携のあり方を検討する材料を提示した。

まず、協働の前段階として、平成24年度中に、ラーニング・コモンズ設置をはじめとする館内ゾーニングの変更が計画され、附属図書館の複数部署に渡る職員及び研究開発室教員でワーキンググループにより、学内予算要求のための基本コンセプトを作成した。ついで、平成25年度に予算化がなされると、具体的なプランニングに教員や学生らの幅広い意見を取り込むこと、また、空間デザインのみならずそこでの「学び」をもデザインすることを目的として、京都大学学術情報メディアセンター「コンテンツ作成協同研究」の枠組みで検討を行うこととなった。さらに、「協同研究」メンバーである教員のつながりから、京都大学デザイン学大学院連携プログラムの授業である「FBL/PBL:学習環境のデザイン」と連携することとなり、図書館員、教員、学生からなるメンバーの協働が実現することになった。

協働においては、まず図書館側がラーニング・コモンズとして実現したい機能、実現したくない機能といった機能要件、そして「利用者間の創発を生み出す」、「図書館の資料・サービスへ接続する」といった空間の性格付けを提示した。その後、協働メンバーによる館内状況の調査や学生からのヒヤリングを行った。その上で、メンバー間でメールやミーティングによるコンセプトのすり合わせを行いながら、造作物設置を含む空間デザインや什器選定などにおいて、メンバー学生による提案の具体化を検討していった。その際、教員は学生のアイデアを実現するサポートを行い、図書館員は予算面や利用上の観点から評価をし、館内意思決定の段取りを行う役割を果たした。その中で、検討の過程から将来的な使われ方も含めて、「学びの実験場」であるという当館ラーニング・コモンズのコンセプトが創出された。

こうして完成したラーニング・コモンズは、約455㎡と決して大きなものではなく、他大学に比して開設時期も早くはないが、木製造作物「クスノキ」に象徴されるユニークな空間となっている。また、利用はグループによる討議などが主であり、かつ平日午後には平均50名以上の利用者が見られるなど、活発な学びの場として機能している。これをして協働の成果とするのは早計であるが、協働メンバーを核にしたさらなる館内改修計画の検討、図書館をフィールドとした「FBL/PBL」の継続など、発展的、継続的な展開がなされている。

さて、こうした異なる文化を背景とするメンバーの協働においては、実現したいことの相違から、意思決定のあり方やスピード感に至るまで、様々なコンフリクトが生じ得る。しかしながら、それは最終的に実現したい像を共有すること、そして、それぞれが持つコンテキストやリソースを提示することで解消できる。また、新しい機能空間を生み出すにあたっては、そうした協働の過程自体を意義あるものに転化し得ると考える。さらに、そのような過程を経て出来たラーニング・コモンズは、現在、図書館の発展的変化のコアとして機能しつつあると認識している。

参考文献:特集「LEARNING COMMONS OPEN!. 京都大学図書館機構報静脩. 51(2):2014.7

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