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2012年8月

研修ってなんだろう (INFOSTA Forum 第260回)

「情報の科学と技術」62(8)(2012/8)掲載

 明日はフレッシュな図書館員が集まる研修会での講師を仰せつかっています。講師として、いただいたお題をうまくお伝えできるか思案しながら、「研修」というものについて、あれこれ考えてみました。

 私が働く図書館業界では、いろいろな研修がたくさん行なわれています。例えばNIIやNDLなどの機関が研修事業として催すもの、また図書館関係の団体や学会が行なうものなど。INFOSTAが開催されている研修会・セミナーもそのひとつですね。「わざわざ休みの日にお金を払って勉強しに行くとは・・・」と言う友人もいますが、研修の多さは勉強熱心な人が多いことの裏返しでもあるのでしょう。

 では、まず参加する立場から見たとき、こうした研修の意義とはなんでしょうか。まずはそこで新たな知見を得られることがあげられます。しかし、研修はそうした知識を得る「きっかけ」としては有効かもしれませんが、実際のところ、研修に参加しなくても得られる知識は少なくありません。また昨今、終了後にはウェブ上で資料が公開されることが多くなっていますし、TwitterやUstreamなどで、リアルタイムの様子を知れることさえあります。となると「わざわざ出かける意味」を小陳さんが言われるように(Infosta Forum第232回)、講師に質問をするなどして発言をすること、そして、懇親会があれば出席して講師や他の参加者と交流することにこそ、研修に参加する主たる意義があると思うのです。さらに、可能ならば、他の業界の研修に顔を出すことも必要かもしれません。思えば、次回執筆いただくアーキビストの福島さんと知り合うきっかけも、図書館業界の少し外側の研修会だったかと思います。やはり私たち情報を扱う職種ほど、研修会のような機会を利用して、より広く交わる意義があるように感じます。

 つぎに、これは今まさに私の課題なわけですが、講師として話すことはどうでしょう。時にはこうしたお役目をいただくようになり、また講習会を担当している今の仕事柄、人前でお話をする機会が多くなっているのですが、もともとはなるべく前には出たくない性分でした。ところが、こうした機会を経験するごとにあまり緊張をしなくなり、アドリブもできるようになりました。現在、図書館員も「伝える」ことがますます求められるようになっています。そこで、伝えるスキルなどを難しく考えるより、習うより慣れろではないですが、まずは場数を踏むことも必要かと感じます。また何より、講師をすることはそのテーマの知識を得るよりよい方法です。質問をいただくことまで考えると、中途半端な準備では前に立てませんから、がんばって勉強せざるを得ません。同じく研修に参加するならば、もし機会が回って来たときは、参加者としてより、講師として参加することをお薦めしたいと思います。

 最後に、こうした研修を企画することについて考えてみます。また自分の話で恐縮ですが、お誘いいただいて図書館関係の団体に関わるようになり、いつの頃からか運営に携わるようになりました。そこでは、講演会やセミナーといった研修の催しの企画も行ないます。そしてそちら側に回ると、今までなんとなく参加していたり、生意気にも、旧態依然とした運営だなぁと思っていたりした研修も、別の目で見られるようになりました。つまり、例えば、せっかく講師に質問ができる機会なのに、誰も発言してくださらずやきもきする司会者の気持ちなどが理解できるようになったのです。さらに、ただ参加するより、研修を企画して実現するほうがずっと楽しいことも分かりました。もちろん、組織として運営する以上、面倒なことはたくさんあります。しかしそれ以上に、皆で研修のテーマを考えること、講師を探すなどの準備をすること、そして最後に参加者の皆さんからよい評価をいただけることのやりがいのほうが大きいのです。
 
 さて、こうして考えてみると、「研修」というものはより深く関わったほうが得るものが多いし、おもしろいものです。とはいえ、得手不得手や関われない状況などはあるでしょう。ただ、今行なわれている多くの研修は、これまでの蓄積と継続の上に成り立っているものだと思います。そしてそうした場は、自分たちで作り、守り、さらに育てていくものなのではないでしょうか。ですから、できることならその場に参加し、発言し、ときには講師側になり、可能ならば作る側でもありたいと考えるのです。
 
 では、明日は、講師として参加者の皆さんにうまくお伝えできること、また、いっしょによい研修会を作れること、そして懇親会で美味しいお酒が飲めることを願って筆を置きたいと思います。

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