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変化の時代と大学図書館 : 本の紹介

「大学図書館問題研究会京都支部報」211号(2003/2)掲載 

 「本の紹介」の第二回目も、前回にならって、テーマに沿って何冊かの本に触れる形をとらせていただきたいと思います。並べた本からひねり出したこのテーマ、なんとか脱線せずに、最後までご紹介できていればいいのですが・・・。

 今、大学は大きな変化の中にあると言われる。もっとも、「変化」は今に始まったことではないし、これからも続いていくものであろう。しかし、さまざまな方向からの変化の波が、形や大きさを変えて打ち寄せているのは、どうやら確かなことのようである。
 『大予測10年後の大学:日本の大学はここまで変わる』1)
この本は、社会構造や経済構造の変動、「大学」に対する期待の変化などの状況のもと、日本の大学の今後を予想する。少子化による大学経営の危機、国立大学の法人化、授業形態のあり方など、複数の著者が多様なテーマを論じており、現在の大学をめぐるトピックを概観することができる。大学職員の役割は教員の下請けではなく、学生支援や大学と社会の関係作りを始めとして、大学経営におけるより積極的役割と企画・マネジメント能力が求められる、との指摘は、図書館にも無関係ではないだろう。

 変化の波の中で電子化・情報化の波は、図書館に既に直接的な影響を与えている。この波が、大学と大学図書館のあり方に与える影響を考察しているのが、次の本である。
 『デジタル時代の大学と図書館:21世紀における学術情報資源マネジメント』2)
本書は、図書館員に限らず、学長や研究者など多様な著者の様々な主張からなる論文集であり、論考の舞台は主にアメリカである。しかし、コスト面から図書館のこれからの方向性を考察する「伝統的図書館存続の危機と高等教育への脅威」、デジタル時代における図書館員の役割を示す「なぜウェブは図書館ではないのか」といった論文をはじめ、日本にも共通する問題提起は多い。原著のタイトルは、『継続性の蜃気楼』。「今起こっている変革のなかで、大学における旧来の枠組みの継続性は、幻なのではないか」というメッセージであるという。変化の波の中にあって、何が変わり何が変わらないのか、という視点で通読しても、これからの図書館のあり方、大学のあり方、図書館と大学との関係性において、示唆を得るところは多い。

 変化の中では、利用者像も常に同じではない。図書館がサービスを提供する組織である以上、利用者=顧客のニーズに応じて、サービス像も変化していくべきなのは言うまでもないだろう。
 『図書館の評価を高める : 顧客満足とサービス品質』3)
本書は、マーケティング手法を用いて、利用者の図書館に対する期待を把握する調査法、利用者の満足を指向するサービス・プラン策定やサービスに対するフィードバック評価のあり方などを解説する。また、「図書館の使命」であるミッション・ステートメントを明示する重要さを指摘し、これをサービス優先度の判断基準や結果の評価基準などに用いることで、図書館運営を裏付けるものとして位置づける。実際のミッション・ステートメントの例や各種調査票なども掲載されており、参考になるだろう。

 ミッションにもとづく組織運営のあり方を考えるための一例として、企業マネジメントのための内容になるが、次の本がある。
 『ミッションマネジメント:価値創造企業への変革』4)
第1章「企業経営とミッションマネジメント」では、「「存在目的と事業」「願望」「価値観」からなるミッション体系を企業の「意志」として活動のトップに据え、そこから導かれる戦略と方針を実行に移し、その結果を評価する」という、ミッションマネジメントの概要が説明される。つづく第2章「ミッションの設定」では、優れたミッション・ステートメントの要件が述べられる。もっともこうしたミッションマネジメントは、利潤という明らかな達成目標がないという点で、むしろ非営利組織にとって重要であることは、従来言われてきたところであろう。また国立大学には、「目標・評価」の仕組みとして、法人化後の運営体制に取り入れられようとしている。本書は、あくまで企業経営の文脈で語られており、すべてがそのまま図書館に適用できるものではないが、第1章と第2章で示される、ミッションマネジメントの大枠についてだけでも、得るところはあるように思う。

 以前、ミッション・ステートメントについて書いたおりに(大図研京都支部報No.208)、「図書館は「誰のために何をするか」を「外」に対してわかりやすく伝えてこなかったのではないか」といったことを述べた。変化の大きな時代において、「図書館とは何か・何ができるのか・なぜ図書館でなければならないのか」という自らの存在意義の確認、そして今後向かおうとする方向を明確に示すことは、図書館自身にとっての意味はもとより、設置母体である大学等を始め、図書館組織外部に対しても欠かせないものとなるだろう。「図書館をどう見せるか」という「戦略」が、いっそう問われているといえる。
 『図書館広報実践ハンドブック : 広報戦略の全面展開を目指して』5)
この本は、「広報」を図書館にとっての「戦略」と位置づける。そのうえで広報手段として、「中長期計画書」「図書委員会」といった組織レベルのものから、「投書箱」のような直接利用者に対するものまで、これらを効果的なものにするポイントを含めて、多くの実践的な例をあげる。そしてこうした広報を試みるとき、図書館の内部に立ちふさがる「カベ」の数々(これらは「所詮無駄」説、「教員無理解」説、「利用者=わがまま」説のように命名される)が、失敗の経験にもとづいて分析される。そこで各「説」を説得し、組織としての広報の実現へ導く方法を逐一示してくれるところが、「実践ハンドブック」たるもう一つの所以だろう。まずはできる手段から実践してみるための手引きとして、また大学の中でどのように図書館の存在を主張するかという外への視点、さらに図書館自らが変わるための図書館自身に対する内への視点を磨くきっかけとしても、なかなか充実の一冊ではないだろうか。

1) 『大予測10年後の大学 : 日本の大学はここまで変わる』 大学未来問題研究会編著 東京:東洋経済新報社, 2001.7 246p ; 21cm ISBN:4492221999
2) 『デジタル時代の大学と図書館 : 21世紀における学術情報資源マネジメント』 B. L. ホーキンス, P. バッティン編 ; 三浦逸雄, 斎藤泰則, 廣田とし子訳 町田 : 玉川大学出版部, 2002.3 370p ; 22cm. -- (高等教育シリーズ ; 112) ISBN:4472402661
3) 『図書館の評価を高める : 顧客満足とサービス品質』 Peter Hernon, John R.Whitman ; 永田治樹訳 東京 : 丸善, 2002.9 xiii, 225p ; 21cm ISBN:4621070851
図書館におけるマーティングについては、次に訳者をはじめとする論考がある。「特集:図書館のマーケティング」『情報の科学と技術』49(2):1999.2
4) 『ミッションマネジメント : 価値創造企業への変革』 アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング著 東京 : 生産性出版, 1997.11 349p ; 20cm ISBN:4820116223
5) 『図書館広報実践ハンドブック : 広報戦略の全面展開を目指して』 私立大学図書館協会東地区部会研究部企画広報研究分科会編集 東京 : 日本図書館協会(発売), 2002.8 303p ; 21cm. --(企画広報研究分科会活動報告書 ; No.4) ISBN:4820402021

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