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「“図書館職の記録研究グループ”からの中間報告」 日本図書館研究会研究例会(第269回)報告

 「図書館界」62(3)(2010/9)掲載

 はじめに、『図書館職と東南アジア : 地域研究情報資源、シニアボランティア、カンボジア』(2009)を著された北野康子氏が、「『図書館職と東南アジア』を書いて」として、執筆過程の体験と併せ、取り上げられたトピックに関わるエピソードを話された。

 同書は1966年にハワイ大学に留学後、京都大学東南アジア研究センター(現東南アジア研究所)の図書館員として24年間働き、定年退職後はカンボジア現地で大学図書館の運営支援に携わったライブラリアンの仕事の記録であり、またライフヒストリーである。自らを「モラトリアム人間」だったとする北野氏だが、「図書館は天職」(書名候補のひとつだったという)とされてから、図書館員や女性の地位の低さにショックを受けながらも、「ライブラリアン」としての問題意識と実践をもって、図書室を構築し運営されてきたことがお話から伺えた。また、書名は「ライブラリアンとして働いたことを通じて、いかに東南アジアと関わったか」の意味だという。現役時代からの東南アジアの図書館関係者との豊かなつながり、そしてカンボジアにおける厳しい状況の中で、図書館を整備した経験と現地の人々との活き活きとした交流の様子は、北野氏の毅然としてかつしなやかな人となりと合わせて、プロフェッショナルとしての誇りと覚悟をもった生き方を感じさせるものであった。なおこの本は、「現代図書館史のなかに司書の自己形成と仕事の記録を残すこと」を目的とする「図書館職の記録研究グループ」の活動のひとつとして発行されたものである。

 ついで、深井耀子氏より、同グループの研究テーマ及び研究手法に関する報告があった。まず、従来図書館の研究や館長についての記録はありながら、そこで働いてきた一般の図書館員の記録が残されていないという問題意識に立脚し、主に1960年代後半以降を対象に、図書館員の生きた記録、とくに女性司書に焦点をあてた研究をするとされた。対象とする記録の例には、当事者の書き下ろし記録、追想文集や遺稿集、図書館通信や書簡等があるという。しかし、アメリカでは図書館女性史研究が行われつつあるものの、男女問わず図書館職が確立していない日本の現況から、館長職も含めて多様な個別事例を収集し研究していくことを目指すとされた。具体的な活動としては、当事者による記録の編集発行、記録に解説を付したリストの作成等をあげられた。とくに森耕一氏の『図書館との半生 : 読書・思索・智命』(1993)を取り上げて、解説付リストの実例を提示された。

 さて、筆者は同じ大学の図書館員として、北野氏がご退職される前のお姿をお見かけしていた。しかしながら『図書館職と東南アジア』を手にし、今回のご報告をお聞きして初めて、そのお仕事の実際を知り、またその生き方に打たれることになった。こうした一図書館員の確かな足跡が、次に続く世代に記録として示されることの意義は、図書館を巡る研究と実践にとって小さくないだろう。なお、ハワイ大学の学生として、また東南アジア研究所のライブラリアンとして、30年以上後の後輩にあたる北村由美氏による同書の紹介が「図書館界」61(6)に掲載されている。併せてご一読いただきたい。

日時:2010年3月6日(土) 14:00~16:00
会場:大阪市立難波市民学習センター
発表者:北野康子氏(元・京都大学東南アジア研究センター図書室主任)、深井耀子氏(椙山女学園大学名誉教授)

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