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図書館のサービスと著作権保護との関係について

 講習会提出レポート(2005/11) 

 図書館は、著作物を収集・蓄積し、利用に供することで、新たな著作物の生産に貢献することをその機能としている。そこにおいて、図書館のコレクション構築のあり方として、すべての図書館が、利用の見込まれるすべての著作物を収集できることが、理想ではある。しかし、収納スペースの問題はもとより、高騰する学術出版物価格や減少する図書館予算などの状況においても、それは不可能である。そこで、自図書館に所蔵していない資料の複写物等を他図書館より取り寄せ、利用に供する、ILL(Inter Library Loan)のシステムは、現在の図書館機能における著作物の利用および学術情報の流通と生産にとって、不可欠のものとなっている。

 さて、このILL における送付手段としてのFAX やインターネット送信は、複写物現物の送付に比して、送料や入手時間におけるパフォーマンスの点から、利用者に益するところは大きい。また、殊に情報の速報性を求める、理工系を中心とする研究分野においては、必要性が高いサービスとなる。

 一方、こうした送付手段は、現在、公衆送信権の対象である。そこで、「図書館のサービスと著作権保護との関係」の一例として、大学図書館における、ILL サービスでのFAX 等による著作物送付と公衆送信権保護との関係および課題を整理してみたい。まず、上述のサービス実施において、権利者の許諾を要さないケースとしては、
 ・著作者の死後50 年経過等の該当要件により保護対象外のもの
 ・著作者の許諾が明示されているもの
 ・「同一の構内」での送信
などがあげられるが、これらに該当するケースは、きわめて少ない。そこで、現在、大学図書館団体と学術出版系著作権管理事業者(JAACC およびJCLS)が、無償許諾契約を結ぶことで、両事業者の管理著作物については、ILL サービスでのFAX 等の使用が可能となっている。ただし、大学図書館側には、
 ・著作権の適正な管理
 ・エンドユーザへの紙媒体複製物のみの提供と中間複製物の廃棄
 ・一定以上利用のあった資料の購入努力義務
等の条件が付されていることに、留意が必要である。

 以上の合意スキームに基づく運用として、大学図書館におけるILL の依頼実務では、「自大学構成員から取寄依頼のあった著作物について、FAX 等での送付が可能かどうか、管理事業者のweb サイト等で確認する。可能であればその旨を依頼先図書館へのコメント欄に記述の上、依頼する」というフローが想定される。

 ところで、この際の確認作業であるが、現状では、JAACC、JCLS 両事業者を確認する必要がある。また、両者ともweb 上で管理著作物の検索システムを提供しているものの、簡略なものであり、検索の仕様は十分とは言い難い。その上、確認対象の著作物が、ヒットしないケースもしばしばである。こうした状態は、管理事業者が分立しており、著作権処理の窓口が複数あることおよび管理対象の著作物が少ないこと等に起因すると考えられる。しかし、このような問題は、少なくとも著作権処理窓口を統一化することによって、一定の解決を図ることができると思われる。またそれにより、図書館以外の利用者も含めて、権利処理における負担を減少させることで、著作物の適正な利用を促進させ得るだろう。よって、これらの課題については、権利者(管理事業者)側における権利処理体制の早急な整備が望まれる。

 なお、近年、理工系を中心とする海外の学術雑誌の多くは、電子ジャーナルとして提供されている。これらの主な出版者は、契約条項において、ILL サービスで掲載論文をプリントアウトしたもの等を電子的に送付することを許可している。このため、公衆送信権とILLサービスの関係上、出版媒体の違いに起因するとはいえ、同一出版者の同一コンテンツの利用における「ねじれ」が生じていることも指摘しておきたい。

 さて、大学における研究・教育活動では、日常的に著作物が生産され、かつ利用されている。そこでの大学図書館は、著作物の生産と利用の接点をなしている。つまり学術情報流通の「現場」にあるものとして、著作物を生産する側と利用する側、それぞれの実際をよく知る立場にある。よって、「図書館のサービスと著作権保護との関係」において、大学図書館が著作権制度を理解し、適正なサービスを提供すべきなのはもちろんである。その上で、大学図書館は、学術情報流通の現状に対応した、望ましい著作権制度の構築に対する責務も、同時に負っていると言えよう。

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