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桂キャンパス移転と電気系図書室

「京都大学附属図書館報 静脩」40(3)(2004/1)掲載

 京都市街を東に望む丘陵上、桂キャンパスの一角に、2003年10月から桂電気系図書室が開室しました。

 電気系図書室は、「工学部等図書室」と呼ばれる、工学研究科と関連部局に設置されている図書室の一つです。専門分野の研究を支援する図書室として、電気・電子工学分野を中心とするユニークなコレクションを所蔵しており、電気系内のみならず、学内外から広く利用があります。また電気系の授業に密着した図書を配置していることもあり、とくに学部生の利用が多いことも特徴になっています。

 化学系・電気系専攻を第一期として始まった、桂キャンパス移転。これから数年かけて、工学研究科・情報学研究科が移転します。一方、工学部の教育はこれまでどおり、吉田キャンパスで行われる予定です。また、桂キャンパスにおける「工学部等図書室」の役割を担う、「桂図書館」の建設も計画されています。こうした現在進行形の変化の中にあって、桂キャンパスが完成するまでの間、桂地区でのサービスを提供する桂電気系図書室、そして吉田地区で学部教育支援を始めとする機能を果たす、従来の吉田電気系図書室という、“二つで一つ”の電気系図書室が生まれることになりました。

 桂キャンパスAクラスター内にある桂電気系図書室は、広さ200㎡ほど。夜間利用にも対応できるよう入口には電子錠を備えており、閲覧席にパソコンを持ちこんで、遅くまで論文を作成する院生さんの姿も見られます。所蔵資料は、当面の研究・教育のために、吉田電気系図書室の図書や雑誌の一部を移動させたものが主になります。また今回の移転を機に、これまで研究室に所蔵されていた学位論文が、電気系の重要な知的生産物のひとつとして、図書室で保管されるようになりました。あわせて、研究室に置かれていた図書や雑誌の一部も収容され、これらは早速、活発に利用されています。しかし、現在の桂電気系図書室の資料の量は、やはり充分なものとは言えません。そこで不足するところは、電子ジャーナルを導入したり、キャンパス間で資料をデリバリーすることで補っています。一方で桂地区の資料は、既にキャンパス外からも利用されていますので、これから移転が進むにつれて、桂キャンパス所蔵となる資料へのニーズは、いっそう増えることが予想されます。電子ジャーナルなどオンライン資料の整備、本や複写物をデリバリーするシステムの充実は、今後、分散キャンパス体制における資料アクセスの保障として京都大学全体の課題となるものかもしれません。

 キャンパス移転という一大プロジェクトに限らず、現在の大学には、大きな変化の波が押し寄せているように見えます。しかしその中にあっても、大学図書館が、多様な分野に渡る様々な形の資料や情報を収集し、それらへのアクセスを提供しながら、未来へ保存していくことは、本来の機能であり続けるでしょう。また、図書館が持つ、資料と情報のもとに人が集い、そこから新たな創造を生み出す、“場”としての役割は、これからも変わらないはずです。キャンパス紹介のパンフレットによると、桂キャンパスは、「研究分野の枠組みを超えた、国際的な産学が共同する様々な融合と交流により、学問の新分野を生み出す」場であり、そして「地域社会との協調」の場ともされています。こうしたキャンパスの顔として、まさに図書館の機能と役割が、求められているのではないでしょうか。

 35年前の電気系図書室の紹介記事(「静脩」5(3):1968)に、教室図書室の機能を有機的に結ぶものとして、「工学部の総合図書館」の可能性を述べたくだりがあります。利用者のすぐ近くにある「工学部等図書室」の利点を活かしながら、将来の図書館のあり方を視野に入れて、変化に対応したサービスを提供していくこと。それが、今の電気系図書室の目標です。

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