« 学術文献の入手の方法 : 大学図書館における雑誌の収集 : "紀要"をめぐって | トップページ | 公立図書館・電子図書館・大学図書館 [: 電子図書館からみた公共図書館の可能性] »

医学図書館と機関リポジトリ

「医学図書館」53(3)(2006/9)“読者からの手紙”掲載

 「電子図書館」、「電子ジャーナル」そして「機関リポジトリ」。まるでトレンドのように次々と現れるこれらのキーワードを耳にするようになったのが、たかだか10 年のうちであることを思うと、図書館を取り巻く環境の変化の早さを感じずにはいられません。そうした中にあって、これからの図書館のあり方はまさに走りながら考えることになりそうです。さて「大学の教育研究活動の成果である学術情報の収集、組織化、保存及び発信のための仕組み」である機関リポジトリの構築支援として行われている国立情報学研究所の事業に、私の勤務する図書館も参加することになりました。そこで、一度立ち止まって近年の『医学図書館』における機関リポジトリやオープンアクセスの記事1)2)などから、「図書館とは?」を考えるヒントをもらうことにしました。

 私が医学図書館に異動しILL依頼を担当するようになって、まず面食らったのはその量の多さです。それから次第に感じてきたのが、和雑誌のオーダーが多いこと、また看護学分野における紀要類へのニーズの存在でした。そこで、紀要と同じく組織単位の知的生産物を公開する媒体としての機関リポジトリが、紀要の発展的解消の役を果たすことができないかと考えるのです。機関リポジトリは、学術雑誌価格高騰に伴う諸問題の解決策としての可能性を持つと言われますが、インパクトファクターといった尺度とは別のところでの文献ニーズが存在する以上、それらを積極的に取り込んだ機関リポジトリ像もあり得ると思っています。

 また機関リポジトリを図書館が運営するということは、図書館が従来の学術情報流通のサポートに加えて、学術情報流通自体の枠組作りを担うことになります。従来、冊子であれ電子媒体であれ、基本的に「固まった」情報を扱ってきた図書館が、「ナマ」の情報を扱うことになるわけです。そこでは、捏造・盗用論文のようなコンテンツが機関リポジトリに搭載されていたときの対応のような課題も、図書館に降りかかってくるかもしれません。そんなことを「電子ジャーナルにおける訂正記事の扱い」3)からは考えさせられました。

 しかし、こうした機関リポジトリをすべての組織が維持・管理するのは難しいように思われます。そこで、国立ライフサイエンス情報センター(仮称) 4)が、その代替機能を果たしたり各機関リポジトリのバックアップ機能を担ったりできないだろうかと考えます。リポジトリサーバの運用においては、設置母体を超えた連携が比較的容易でしょうし、また研究者・医療従事者のみならず、社会に対する情報センターとしての機能にも合致するように思われますがいかがでしょうか。

 さて、機関リポジトリと言っても「海のものとも山のものとも」といった感があるかもしれません。けれどその機能は、40 年来の検討の蓄積がある国立ライフサイエンス情報センター(仮称)の機能上にも見出せます。それは機関リポジトリが「情報を収集・整理し、保存しつつ発信する」図書館機能の新たな展開であると考えるならば自然なことなのでしょう。いずれにせよ変化の中にあってこそ、『医学図書館』の蓄積と発信には、これからの図書館を考える多くのヒントがあるように思うのです。

参考文献
1) 木村優. 学術コミュニケーションの変革と大学図書館:電子ジャーナル,オープン・アクセス,機関リポジトリ. 医学図書館 2005;52(2):129-37.
2) 永井裕子. オープンアクセス実現への可能性を求めて:機関リポジトリは機能するか.医学図書館2006;53(2):192-7.
3) 岡田英孝. 電子ジャーナルにおける訂正記事の扱い.医学図書館 2005;52(2):138-44.4) 阿部信一,磯野威. NPO 法人日本医学図書館協会「国立ライフサイエンス情報センター(仮称)推進準備委員会」経過報告.医学図書館 2006;53(2):166-78.

|

« 学術文献の入手の方法 : 大学図書館における雑誌の収集 : "紀要"をめぐって | トップページ | 公立図書館・電子図書館・大学図書館 [: 電子図書館からみた公共図書館の可能性] »

図書館」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/501889/48856502

この記事へのトラックバック一覧です: 医学図書館と機関リポジトリ:

« 学術文献の入手の方法 : 大学図書館における雑誌の収集 : "紀要"をめぐって | トップページ | 公立図書館・電子図書館・大学図書館 [: 電子図書館からみた公共図書館の可能性] »