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「図書館経営分科会」参加報告 「パブリックサービスのアウトソーシング実践:慶應義塾大学三田メディアセンターでの取り組み」

「大学の図書館」 21(12)(2002/12)掲載

[大学図書館問題研究会 第33回全国大会(2002年)  第11分科会 : 図書館経営分科会]

 村上篤太郎氏(慶應義塾大学三田メディアセンター)に「パブリックサービスのアウトソーシング実践:慶應義塾大学三田メディアセンターでの取り組み」と題してご報告いただいた。当初にアウトソーシングは本来的業務の軽減を意味しない、リスクを伴うものであり必然性なく導入すべきでない、という2点を指摘された。これは大会討議資料にいう「なし崩し」的アウトソース化が進みかねない時、注意しておきたいことと思われる。アウトソーシングは一般に外部資源活用によるコスト削減、コア・コンピタンスへの自組織人材集中が目的とされる。ただし、あくまで目標実現手段の一つであり、明確な戦略の存在、成果を評価できる専任職員の養成と配置、専任職員の専門性向上とスキルの継承が欠かせないとされた。また、成功に導くにはトップダウンの経営改善が前提であるとし、管理職の資質が問われることを強調された。具体的には、情報収集力と判断力、コミュニケーション能力、身分を問わず職務的満足を持てる環境の構築、企画立案・評価サイクル確立、そして現状に安住しない意識改革が求められるという。

 現在、三田メディアセンターには、閲覧部門を中心にアウトソーシングスタッフが約60名おり、これは全職員の5 割強に相当する。この大規模なアウトソーシングに踏み切った要因として、大学の経営政策に伴う整理部門の本部集中化と専任職員削減、職員の高齢化とIT への非積極性、専門性の疑問と重なる一般事務職からの異動などを挙げられた。ついで、リスク回避のための段階的アウトソース化、更新期限を設け専任職員より在籍が長くなることを避けるなど、多くの運用ノウハウを示された。また能力を積極的に評価する、業務に変化を与えるなどで、アウトソーシングスタッフのモチベーション向上を図り、さらにパートナーと位置付け、定期的なミーティング等で信頼関係構築と組織全体の知識蓄積を目指しているという。一方では専任職員の専門職制確立のため、検討WG が組織されている。アウトソーシングの成果として、業務再構築による新組織発足、サービス拡大の原動力、専任職員へのカンフル剤的効果等があったとのことである。なお、導入1 年目は、利用者からクレームがでるなど「失敗」だったが、現在では学部生・院生の満足度は高いとされた。ここで評価傾向へ転じ得た要素は何か興味深い点である。最後に今後の課題として、新規委託業務やパートナー会社の開発、外部スタッフの世代交代、職務評価制度やナレッジマネジメントの導入などを挙げられた。

 質疑応答では、契約例や業務管理など実際的内容が大半を占めた。これについて司会者の指摘した、過去2 年の経営分科会でアウトソーシングの是非が議論の焦点となったことからの変化は、状況の急激な変化を窺わせる。アウトソース化が進む中、今後はその実体把握と多面的、継続的評価手法の検討が求められるのではないだろうか。なお、分科会事前アンケート項目の「ミッション・ステートメント」に関して議論を深める余裕がなかったが、業務再構築にあたっても重要なポイントであり、これからも取り上げていってもらいたい。アウトソーシングをキーワードして、組織マネジメントのあり方、専門性の位置付け、サービス評価の視点、誇りを持って働ける環境構築など、図書館にとっての本来的問題をあらためて提起した分科会であったと思う。

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