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[大学図書館の]ミッション・ステートメント

「大学図書館問題研究会京都支部報」No.208(2002/11) 掲載

 今回参加した経営分科会では、慶應義塾大学三田メディアセンターにおけるアウトソーシング事例の報告が行われた。当日は、アウトソーシングのマネジメントの実際について熱心な質疑が交され、アウトソース化の広がりを強く印象づけられた。一方、分科会のもう一つのテーマとして設定されていた、「図書館のミッション」を巡って議論するにはやや時間不足のきらいもあったが、あらためてこのテーマを考えるきっかけを与えてもらった。そこで分科会の報告は『大学の図書館』に譲り、いただいた紙幅は「ミッション・ステートメント」について、使わせていただきたい。

 「ミッション・ステートメント」というと洋モノの印象が強いが、元来、日本でも企業では「社是・社訓」、また私学などでは「建学の理念」といった形で存在していたものであろう。ただし、図書館としての「ミッション」を明確な形で掲げることは、これまで多くなかったように思われる。現在、web 上の確認できる場所にミッション・ステートメントに相当するものを掲載している大学図書館としては、東北大学、山梨大学、信州大学、山口大学などがある1)。また、国立大学においては、近年の自己点検・評価報告書や外部評価報告書、将来構想報告書といったものの中で、「ミッション」という形での明確な位置づけはなくとも理念や目標について言及している例は多い。これらは、大学設置基準の大綱化に伴う自己点検・評価の導入(平成3 年)とこれの義務化(平成11 年)や大学審議会答申『21 世紀の大学像と今後の改革方策について』2)(平成10 年)に言うところの大学の理念・目標の明確化とこれに基づく、大学評価制度の導入を背景にしたものと考えられる。近頃、大学がその理念を策定・表明する例も見られるが、上にあげた各図書館のミッション・ステートメント作成もこうしたの流れの中に位置づけられるものであろう。また現在、独法化を前にして、国立大学の各組織で作成を求められている「理念と目標」を先取りしたものであるとも言えよう。以上から考えると、とくに国立大学における近年のミッション・ステートメント作成は、政策に後押しされての側面は無視できない。しかし、経営分科会のテーマとして指摘されていたように、今後はすべての大学において、「経営」的視点からのミッションの位置づけが、より必要になると思われる。そういった意味からも、ミッション・ステートメントの導入において先行している、海外の図書館の事例に注目してみたい。導入の背景には、非営利組織経営論や企業マネジメント手法などがあるものと想像される3) 。これが現在のような形で図書館に取り入れられるようになった経緯も興味が引かれるところであるが、まずミッション・ステートメントの訳出を試みた。

 今回あらためて訳してみると、基本的に似通った点が散見される。おおざっぱではあるが、おおよそ共通する要素としては、以下のようなものがあげられるだろうか。
・シンプルな言葉からなる。
・学内複数図書館全体としてのミッション・ステートメントである(もちろん各図書館のミッション・ステートメントが存在するケースはありうる)。
・サービス対象として、自大学の学生・教員等および学術コミュニティ全体をあげる。
・機能として、コレクションの収集・整理・保存、そして情報アクセスや情報リテラシー教育などのサービスによる教育・研究支援をあげる。

 今後社会的要請としても、組織の存在理由の説明がこれまでになかったほど求められることになろうと予想される。自身にとってはあまりに自明だったためだろうか、とくに図書館は、これまで「誰のために何をするか」を「外」に対して、必ずしも分かりやすくは伝えてこなかったのではないかと思われる。ならば、きっかけはなんであれ「図書館の使命」を今、言挙げするのも悪くないのではないだろうか。それを実質ある言葉として、実際に示していくことが求められるのは言うまでもない。しかし、まずは図書館員が誇り持って語れる、魅力的な「ミッション・ステートメント」を持ちたいと思う。

ミッション・ステートメント 試訳
・ミッション・ステートメント訳出は、経営分科会での一橋大の小野亘さんの提案をきっかけにしている。
・ミッション・ストーメントの作成年月が明記されているものは少ないが、訳出分はすべて昨年(2001 年)11 月時点で、web にアップされていることを確認している。
・ミッション・ステートメントは、一般に「ミッション」にあたる部分とそれを達成するための目標(Vision)等から構成されるケースが多いが、ここでは前者のみを訳したものが多い。もとより拙訳であるため、実際には元の英文をご覧いただきたい。
・web 上で確認できたものを対象にしている。図書館の選択には基準はないが、米国については、『ゴーマンレポート 10th ed.[日本語版]』アイ・エル・エス出版, 1998 のTop100 リストを参考にした。
・web 上にあっては、サイト内のどこに掲載されているかは重要と考え、URL とともに図書館ホームページからの階層を示した。

ミシガン大学
http://www.lib.umich.edu/dls/profile.pdf
Home > Visitors
『University Library Profile』の一節
 図書館の使命は、教員・学生・職員の教育・研究・業務を支援し、その向上を図り、そして共同することであり、さらには人類の知の記録を収集・整理・保存し、利用者と結び付け、分かちあうことにより、公益に貢献することである。この使命は、図書館システムの利用者に有用な各種のコレクションとプログラムを提供することにより達成される。

カリフォルニア大学ロスアンゼルス校
http://www.library.ucla.edu/administration/mission_statement.html
Home > Library Administration > Mission Statement
『Mission Statement』
 図書館の使命は、研究・教育という大学の使命を支援するため、UCLA の教員・学生・職員に、情報資源へのアクセス手段および情報資源そのものを提供することである。図書館は、そのコレクションをもっとも使いやすいように構築・整理・保存するとともに学外情報源へのリンクも提供する。図書館は、利用者自身がその学術的・知的なニーズを満たすことができるようにするため、情報リテラシーおよび情報マネジメント教育等のサービスを提供する。図書館は、可能な限り学外の利用者にもその資料とサービスを提供する。

 図書館は、高いスキルを持つスタッフにより、自らの革新を求め、ふさわしい技術を取り入れ、有意義なパートナーシップを築き、そして積極的によりよい図書館を目指す。

マサチューセッツ工科大学 5)
http://libraries.mit.edu/about/mission.html
Home > About Us
『Mission』
MIT 図書館群は研究、学習における創造的なパートナーです。
私たちは、MIT の教育・研究に関する情報資源を選定、整理、提供、保存します。
私たちは、国際的に評価されるこれら情報資源を維持し、現在そして未来の学術研究コミュニティのために質の高いサービスを提供します。
私たちは、これらの情報資源どうしを知的に結びつけるとともに情報の有効な活用についてMIT構成員を教育します。
私たちは、MIT 構成員が情報を必要とした時、まず思いつく場所となることを目指します。
-1999 年2 月

カリフォルニア工科大学
http://library.caltech.edu/about/default.htm
Home > About the Library
『CLS Mission Statement』
カリフォルニア工科大学図書館システムは、大学の教育・研究プログラムを支援し促進するため、求められる時に最適なコストで、図書館資料と最上質の先進的情報サービスを提供する。
『CLS Vision Statement』
我々はカリフォルニア工科大学の学術的・科学的優位性に不可欠な、活動的かつ利用者指向の組織である。

ノースウェスタン大学
http://staffweb.library.northwestern.edu/admin/stratp2000.pdf
Home > Library Administration > Selected Publications
『Strategic Plan, Fiscal Year 2001-2003』
「Mission Statement」
ノースウェスタン大学図書館の使命は、大学の教育・研究・専門・運営の各プログラムを支え向上させるため、情報資源と最上質のサービスを提供することである。図書館は、自立した学習へ導く環境および資料を図書館内および全学の利用者さらには学術コミュニティ全体に提供する。
図書館は、環境の激変の中、大学と情報の結合に指導的役割を果たすことで、利用者の要求に応えることを表明する。図書館は、情報資源に関する選定・整理・アクセス手段提供・保存および活用のための利用者教育における革新的な戦略を構築する。そのため、利用者と必要とする資料とを結び付けるために、図書館外部との有効なパートナーシップを築く。
「Vision」
(以下略)

ノートルダム大学
http://lib.nd.edu/aboutlib/mission.shtml
Home > University Libraries > About the Libraries
『Mission and Vision of the University Libraries of Notre Dame』
「Our Mission」
ノートルダム大学の情報資源において主要な位置を占めるものとして、以下により大学の目的に貢献することをノートルダム大学図書館群の使命とする。
1. どこであっても情報資源へのアクセスを提供する。
2. 授業・研究・サービスの支援に必要な図書館資料を形態の如何に関わらず収集する。
3. 図書館の重要なコレクションとユニークな資料を未来の学問のために保存する。
4. 所蔵しない情報資源への適切なアクセスを保証するため広範な協力プログラムに参画する。
5. 図書館の資料と機能のため、また図書館の情報資源とサービスを利用する人たちのために図書館施設を望ましい状態に維持する。
6. 情報資源の特定と効果的な使用に関して、教員・学生・職員を教育し、また支援する。
7. 大学の目標の追求のため、学術資源マネジメントと情報技術の活用において、他部門との協調のもとにリーダーシップを発揮する。
「Our Vision」
(以下略)

ブラウン大学
http://www.brown.edu/Facilities/University_Library/MODEL/SPSC/index.html
Home > More > library departments & staff > strategic planning
『A Strategic Plan for the Brown University Library』
「Our Mission」
 ブラウン大学図書館は、最新の情報と学術的記録の身近な保管庫として、またそれらへの主たる入り口として、教育・研究という大学の使命を支援します。そのために図書館は、第一には現在および未来のブラウン大学の学生と教員のためのコレクションであり伝達者でありそして教室であって、加えてその他の大学関係者、地域および国内外の学習・研究コミュニティのためにも貢献するものです。
「Our Vision」
(以下略)

ミネソタ大学
Home > About the Libraries > Vision and Mission Statements
『Vision and Mission Statements 』
「Vision Statement」
ミネソタ大学図書館群は、高品質な情報への迅速なアクセスにとって、ミネソタ大学おける第一の選択肢である。
知的かつ革新的でサービス指向の図書館職員は、
・情報に関する資源とスキルを大学の教育、研究、サービス全般の使命に融合させる。
・ユニークなデジタル資源、サービスを開発する。
・経済的に持続可能な学術コミュニケーションの創造に共同する。
「Mission Statement」
図書館の使命は、現在と未来の利用者のため、人類の思考・知識そして文化の記録へのアクセスを整備し、またこれを保存することである。図書館は、コレクションの構築・サービスの提供・情報技術の創造的な応用によって、研究と発見・教育と学習・福祉と公共サービスという三つの組み合わせからなる大学の使命を支援する。
「Values」
(以下略)

ライス大学
http://www.rice.edu/fondren/info/history.html
Home > General Info > History of Fondren Library
『Mission Statement』
 ライス大学フォンドレン図書館の使命は、文学・科学・芸術分野の発展およびすべての活動における卓越性の追求のため、学部および大学院教育に強力に参画することによって、大学の教育・研究・公共サービスプログラムを支援することである。フォンドレン図書館のコレクションとサービスは、図書館は単なる本のコレクションではなく、新進および名声ある学者が、情報を手に入れまた学びや創造の試みへと導く環境の下に集う場所として、その知的なスタッフおよび先進的情報技術と合わせて大学にとっての不可欠な資源である、という理念に基づいている。

カーネギー・メロン大学
http://www.library.cmu.edu/Libraries/sp.html
Home > Libraries and Collections > Strategic Plan
『University Libraries' Strategic Plan』
「Vision」
 カーネギー・メロン大学図書館群は、大学コミュニティの情報に対する現在のそして絶えず変化するニーズに対して、機敏に応えることができるように策定された、創造的、専門的な、また先進情報技術によるサービスを提供する。
「Mission」
・大学における教育、研究、芸術的および学術的な試みを支援し、これに貢献すること。
・情報資源のもっとも効果的な利用のため、これを収集・整理し、利用可能にし、維持・保存すること。
・図書館サービス、図書館資料、そして遍在する情報へのアクセスに関する知識を育て、広めること。

ワシントン大学
http://library.wustl.edu/about/vision.html
Home > About the Libraries > Library Vision, Mission, and Goals
『WU Libraries Vision, Mission, & Goals』
「Vision」
私たちはこんな図書館にしようと考えています。
・すべての図書館活動の中心に利用者を据えて、大学構成員の様々な要望と期待に迅速に応えます。
・誰にとっても魅力的で居心地がよく使いやすくて安全です。
・図書館の内と外のどちらにも豊かな情報資源とコレクションを持ちます。
・共同的で革新的な教育・学習・研究環境をともに構築します。
「Mission」
ワシントン大学図書館群の使命は、大学コミュニティ全体に対し、必要なときに効率的な情報アクセスを提供することで、大学における学習・教育・研究そして創造の発現を支援することである。
「Goals」
(以下略)

ラトガース大学
http://www.libraries.rutgers.edu/rul/about/about.shtml
Home > About the Libraries
『Mission Statement』
ラトガース大学図書館群は、ラトガース・ニュージャージー州立大学における研究および教育プログラムにとって不可欠な存在である。
図書館は、大学における情報リテラシーと学術コミュニケーション活動を先導する、サービスと学習のための組織である。
図書館は、ラトガース大学の学生や教員、ニュージャージー州住民および学術コミュニティ全般に対し、知的探求や知識の創造そして生涯学習を支援するために学術情報資源へのアクセスを提供する。

ピッツバーグ大学
http://www.library.pitt.edu/uls/
Home > University Library System
『University Library Sysytem Mission Statement』
ピッツバーグ大学図書館システムの使命は、教育・学習・研究・創造・地域サービスおける大学の先導的目的の達成にとって不可欠な情報資源へのアクセスを提供し促進することであり、また効果的な情報・教授・学習システムの開発において共同することである。
『University Library Sysytem Quality Service Commitment Statement』
(以下略)

アリゾナ大学
http://www.library.arizona.edu/library/teams/slrp/00_01VMP.html
Home > Library Information > Mission, Vision and Current Situation Analysis
『Mission(revised Jan 2002)』
生涯学習の能力と継続教育の成果の向上を図るため、アリゾナ大学図書館は、自由かつ開かれた探求の環境、そして自らの卓越性の表明を持って、学生・教員・職員およびその他利用者のあらゆる教育・研究のニーズに応えることに専心する。

オックスフォード大学(ボードリアン図書館)
http://www.bodley.ox.ac.uk/mission.html
Home > Reports and Policies > Mission Statement
『Mission and Objectives』
「Mission」
図書館の使命は、現在そして将来において、オックスフォード大学および国内外の学術コミュニティの教育・研究のニーズを支援するため、コレクションとサービスを維持し構築することである。この使命を実現するため、図書館は常に次の事項を目指す。
(a)現在の利用者および潜在的利用者のニーズへの理解を育て持続し、そしてこれに応える。
(b)必要なコレクションおよびサービスを構築し、これらへのアクセスを提供する。
(c)未来の利用者のためにコレクションを保存する。
(d)すべてのスタッフについての適切なスキルとモチベーションを開発する。
(e)財政的継続性を確保する。
(f)カレッジを含む他の大学組織との良好な関係を強化する。
(g)オックスフォードおよび全世界の図書館と協力する。
(h)以上の目標を達成するため、すべての分野において、テクノロジーの可能性を活用する。

シェフィールド大学
http://www.shef.ac.uk/library/libdocs/indexsp.pdf
Home > Documentation
『New worlds of information : The Library Strategic Plan 2002/2003 - 2004/2005 』
「Mission statement and objectives」
 大学の使命は、スタッフが学術的探求の最先端で研究をし、また研究的環境の中で学生教育が行われるよう、研究指向大学としてもっとも優れた基準を維持することである。
図書館の役割は、研究・学習・教育のために大学構成員が必要とする情報資源へのアクセスを提供することである。
図書館の主要な目標は次のとおりである。

(以下略)
ポーツマス大学
http://www.libr.port.ac.uk/policy/mission.html
Home > Library Policy
『Mission Statement & Strategic Aims』
「Mission Statement」
図書館は、大学の総合的目的および目標を支援するため、ミッションステートメントと戦略計画によって具体化されるところの統合的図書館・情報サービスを提供する。コスト面の有効性に充分配慮しつつ、図書館は利用者の要求に機敏であり続けるとともにサービスの開発およびニューテクノロジーの活用に積極的に取り組む。
「Strategic Aims」
(以下略)

香港工科大学
http://library.ust.hk/info/mission.html
Home > About the Library
『Library Mission』
大学の教育・研究プログラムを支援すること。
香港工科大学の学生へ一般教育を提供し、これを推進すること。
情報の共有と交換において、香港および地域の発展に寄与すること。

1) 東北大学 <http://www.library.tohoku.ac.jp/pub/future.html>
山梨大学 <http://www.lib.yamanashi.ac.jp/concept.htm>
信州大学 <http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/kashin10/kashin102.htm>
山口大学 <http://www.lib-c.yamaguchi-u.ac.jp/rinen/rinen.html>
<http://www.lib-c.yamaguchi-u.ac.jp/jikoten/>
2) 『21 世紀の大学像と今後の改革方策について』
< http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/daigaku/toushin/981002.htm>
3) 企業におけるミッション・ステートメントの例については、パトリシア・ジョーンズ他
『世界最強の社訓』講談社, 2001
4) MIT の図書館運営については、呑海沙織「マサチューセッツ工科大学の図書館運営」『図書館雑誌』95(2):2001.2

[URL はすべて2002年11月5日に確認]

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