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2010年4月

シンポジウム「教育系サブジェクトリポジトリの 可能性を求めて:ネットワーク時代の教育情報 発信を考える」参加報告

 「大学の図書館」28(2)(2009/2)掲載

 東京学芸大学附属図書館では、国立情報学研究所による学術機関リポジトリ構築支援事業のプロジェクトの一つとして、「教育系サブジェクトリポジトリ」の構築を進めている。その一環として、標記のシンポジウムが、2008 年12 月18日、東京学芸大学附属図書館にて開催された。

 機関リポジトリを巡っては国内でも多くの事例が蓄積されつつあるが、「サブジェクト(主題別)リポジトリ」という取り組みは、ユニークなものである。筆者の所属する大学の機関リポジトリも、大阪教育大学、兵庫教育大学とともに構築実験に参加していることもあり、出席の機会を得た。以下、シンポジウムの内容についてご報告するとともに、とくに教育系大学におけるリポジトリのあり方について、考えてみたい。

 このプロジェクトは、国立教育系大学図書館協議会において、リポジトリ推進にあたっての協力体制を検討する中から生まれたものである。具体的な仕組みとしては、参加大学が、それぞれの機関リポジトリに収録されたコンテンツのうち、教育に関する研究成果について、「教育情報」であることを示すフラグと「学校種別」や「教科」など、教育分野に特化した主題項目のメタデータを付与する。フラグの付されたメタデータは、東京学芸大学のシステムから定期的に、自動で収集(ハーベスティング)される。この結果「教育系サブジェクトリポジトリ」からは、教育情報を統合的にかつ主題からも検索できるようになるというものである。

 講演では、まず、栗山正光氏(常盤大学人間科学部准教授)により、リポジトリの定義、オープンアクセス運動とリポジトリの関係が解説された。さらに国外におけるサブジェクトリポジトリの事例が紹介された。現在、国内のリポジトリは、その多くが国立情報学研究所のプロジェクトを受けて立ち上がった経緯上、ほとんどが「機関」リポジトリである。しかし、様々な背景や目的を持つ「サブジェクト」リポジトリからは、「リポジトリ」というコンセプトの持つ広がりを認識させられた。

 ついで、岡本真氏(Academic Resource Guide編集長)は、まず、現在の国内におけるリポジトリのあり方への懸念を示した。それは、求められる内容や提供するターゲットが必ずしも的確に設定されていないのではないかということ、図書館員だけの盛り上がりになっているのではないかということ、そしてそこにおいては、外部資金が切れたときの持続可能性に不安があることである。その上で、「教育系サブジェクトリポジトリ」に対する期待として、個人ウェブサイトなどにおける有用な教育情報の発信例を示して、「機関」外のものも収載対象とするあり方を挙げられた。

 岩田康之氏(東京学芸大学教員養成カリキュラム開発研究センター准教授)は、科研費プロジェクトにより「教師教育文献目録データベース」を構築した経験について、分野としての幅の広さ、現職教員から研究者まで様々な対象者を持つ、多様な資料が存在するなど、教育情報の特性を示しながら紹介された。また、DB 構築の背景として、近年、教員が学生に対し必読文献を示すといったかつてのようなフォローをしなくなっていること、院生がネットの検索結果に表示される文献をまず入手しようとすることなど、研究スタイルの変化を語られたのが、教員の生きた問題意識として印象的であった。最後に、東京学芸大学附属図書館の高井力氏が、実務担当者として、「教育系サブジェクトリポジトリ」のコンセプトや仕組みについて、デモを交えて解説された。

 その後、会場を交えてのパネルディスカッションが行われた。講演の部で、リポジトリのあり方や教育情報の特性がトピックになったことから、「教育系サブジェクトリポジトリ」が対象とするコンテンツや今後の方向性について、意見が交換されることとなった。

 まず、プロジェクトに参加している各大学の実務担当者から、収録資料や取り組みの現状についての発言があった。いずれの大学でも「まずはできるところから」ということで、紀要論文等の学内刊行物が主なコンテンツとなっているのは、共通する点であった。もっとも、大規模研究大学や医理工系分野以外では、こうした状況に大差はないと思われる。ところで、「教育実践資料」は、論文と並ぶ本プロジェクトの主要なコンテンツに位置づけられている。しかし、それらには、児童・生徒を特定できたり、顔写真が掲載されているものなど、プライバシー等の観点から扱いに苦慮する例が少なくないこと、その対応策として、当該部分をマスクした上でリポジトリに収載している事例が報告された。これにはまずはコンテンツ作成者側の意識が問われる必要があるとはいえ、今回報告されたような掲載コンテンツの扱いに関する実務面での手法は、今後いっそうの共有化が望ましいように感じた。

 また、機関リポジトリのあり方を巡って、会場から「機関リポジトリの一義的な役割とは、学内生産コンテンツをネット空間に固定することにあるのではないか」とする発言があったが、筆者も「大学電子出版プラットフォーム」としての機関リポジトリの機能は、重要なものだと考えている。大学からの情報発信の意義はもとより、「ネットワーク時代」の中では、研究活動においても「まず検索できること」が前提となりつつあるならば、埋もれている過去の刊行物も含め、学内研究成果をネット上に公開していく必要性はますます高まっている。

 その際、教育系大学にとっては、当面の主たるコンテンツのひとつは、やはり紀要類となってくるだろう。学問分野や大学の性格によるが、紀要には、発行の意思とともに、文献入手ニーズも相変わらず存在している。そこで、現在印刷物として紀要を発行している学内の体制と予算を機関リポジトリに振り向けることができれば、今後のリポジトリ事業の継続性を担保する方策のひとつになると考えるのだが、どうだろうか。

 さて、これまで機関リポジトリは、オープンアクセスの手段として、研究者の新たな発表媒体として位置づけられる傾向があったし、またその結果として、大学図書館は、リポジトリ事業を媒介に、研究者としての教員との新たな関係性を築きつつあるのは確かである。しかし、一方で、リポジトリに蓄積されネット上で可視化された様々なコンテンツをどのように評価し使っていくか、という教育の文脈における教員と大学図書館との連携やそこでの大学図書館員の役割は、今後問われてよいだろう。

 ついで、先述のように、国内の学術情報流通の実情に即して、実際に必要とされている紀要論文等の学内生産コンテンツに重点を置くというのも、機関リポジトリのあり方のひとつである。加えて、教育実践資料の例のように、従来のリポジトリコンテンツの枠に収まらない多様な資料を扱うことは、コンテンツ自体の持つ意義はもとより、リポジトリ全体の運用経験を成熟させる上でも、貴重な蓄積となるだろう。

 以上は、教育系リポジトリというフィールドにおいては、より求められる視点のように思われる。ともあれ、大学や学問分野の個性に応じて、様々なリポジトリが存在していいだろうし、またそこに蓄積されていくコンテンツの多様性は、リポジトリという制度自体の強みになっていくはずだ。そして、その上においてこそ、「教育系サブジェクトリポジトリ」による付加価値は、よりいっそう高まるのではないだろうか。今回は、「教育系サブジェクトリポジトリ」という切り口から、リポジトリ全般に渡る課題とともに、多様なリポジトリのあり方を巡っての可能性をも感じたシンポジウムであった。

※「[シンポジウム開催報告] 教育系サブジェクトリポジトリの可能性を求めて:ネットワーク時代の教育情報発信を考える

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[大学図書館の]ミッション・ステートメント

「大学図書館問題研究会京都支部報」No.208(2002/11) 掲載

 今回参加した経営分科会では、慶應義塾大学三田メディアセンターにおけるアウトソーシング事例の報告が行われた。当日は、アウトソーシングのマネジメントの実際について熱心な質疑が交され、アウトソース化の広がりを強く印象づけられた。一方、分科会のもう一つのテーマとして設定されていた、「図書館のミッション」を巡って議論するにはやや時間不足のきらいもあったが、あらためてこのテーマを考えるきっかけを与えてもらった。そこで分科会の報告は『大学の図書館』に譲り、いただいた紙幅は「ミッション・ステートメント」について、使わせていただきたい。

 「ミッション・ステートメント」というと洋モノの印象が強いが、元来、日本でも企業では「社是・社訓」、また私学などでは「建学の理念」といった形で存在していたものであろう。ただし、図書館としての「ミッション」を明確な形で掲げることは、これまで多くなかったように思われる。現在、web 上の確認できる場所にミッション・ステートメントに相当するものを掲載している大学図書館としては、東北大学、山梨大学、信州大学、山口大学などがある1)。また、国立大学においては、近年の自己点検・評価報告書や外部評価報告書、将来構想報告書といったものの中で、「ミッション」という形での明確な位置づけはなくとも理念や目標について言及している例は多い。これらは、大学設置基準の大綱化に伴う自己点検・評価の導入(平成3 年)とこれの義務化(平成11 年)や大学審議会答申『21 世紀の大学像と今後の改革方策について』2)(平成10 年)に言うところの大学の理念・目標の明確化とこれに基づく、大学評価制度の導入を背景にしたものと考えられる。近頃、大学がその理念を策定・表明する例も見られるが、上にあげた各図書館のミッション・ステートメント作成もこうしたの流れの中に位置づけられるものであろう。また現在、独法化を前にして、国立大学の各組織で作成を求められている「理念と目標」を先取りしたものであるとも言えよう。以上から考えると、とくに国立大学における近年のミッション・ステートメント作成は、政策に後押しされての側面は無視できない。しかし、経営分科会のテーマとして指摘されていたように、今後はすべての大学において、「経営」的視点からのミッションの位置づけが、より必要になると思われる。そういった意味からも、ミッション・ステートメントの導入において先行している、海外の図書館の事例に注目してみたい。導入の背景には、非営利組織経営論や企業マネジメント手法などがあるものと想像される3) 。これが現在のような形で図書館に取り入れられるようになった経緯も興味が引かれるところであるが、まずミッション・ステートメントの訳出を試みた。

 今回あらためて訳してみると、基本的に似通った点が散見される。おおざっぱではあるが、おおよそ共通する要素としては、以下のようなものがあげられるだろうか。
・シンプルな言葉からなる。
・学内複数図書館全体としてのミッション・ステートメントである(もちろん各図書館のミッション・ステートメントが存在するケースはありうる)。
・サービス対象として、自大学の学生・教員等および学術コミュニティ全体をあげる。
・機能として、コレクションの収集・整理・保存、そして情報アクセスや情報リテラシー教育などのサービスによる教育・研究支援をあげる。

 今後社会的要請としても、組織の存在理由の説明がこれまでになかったほど求められることになろうと予想される。自身にとってはあまりに自明だったためだろうか、とくに図書館は、これまで「誰のために何をするか」を「外」に対して、必ずしも分かりやすくは伝えてこなかったのではないかと思われる。ならば、きっかけはなんであれ「図書館の使命」を今、言挙げするのも悪くないのではないだろうか。それを実質ある言葉として、実際に示していくことが求められるのは言うまでもない。しかし、まずは図書館員が誇り持って語れる、魅力的な「ミッション・ステートメント」を持ちたいと思う。

ミッション・ステートメント 試訳
・ミッション・ステートメント訳出は、経営分科会での一橋大の小野亘さんの提案をきっかけにしている。
・ミッション・ストーメントの作成年月が明記されているものは少ないが、訳出分はすべて昨年(2001 年)11 月時点で、web にアップされていることを確認している。
・ミッション・ステートメントは、一般に「ミッション」にあたる部分とそれを達成するための目標(Vision)等から構成されるケースが多いが、ここでは前者のみを訳したものが多い。もとより拙訳であるため、実際には元の英文をご覧いただきたい。
・web 上で確認できたものを対象にしている。図書館の選択には基準はないが、米国については、『ゴーマンレポート 10th ed.[日本語版]』アイ・エル・エス出版, 1998 のTop100 リストを参考にした。
・web 上にあっては、サイト内のどこに掲載されているかは重要と考え、URL とともに図書館ホームページからの階層を示した。

ミシガン大学
http://www.lib.umich.edu/dls/profile.pdf
Home > Visitors
『University Library Profile』の一節
 図書館の使命は、教員・学生・職員の教育・研究・業務を支援し、その向上を図り、そして共同することであり、さらには人類の知の記録を収集・整理・保存し、利用者と結び付け、分かちあうことにより、公益に貢献することである。この使命は、図書館システムの利用者に有用な各種のコレクションとプログラムを提供することにより達成される。

カリフォルニア大学ロスアンゼルス校
http://www.library.ucla.edu/administration/mission_statement.html
Home > Library Administration > Mission Statement
『Mission Statement』
 図書館の使命は、研究・教育という大学の使命を支援するため、UCLA の教員・学生・職員に、情報資源へのアクセス手段および情報資源そのものを提供することである。図書館は、そのコレクションをもっとも使いやすいように構築・整理・保存するとともに学外情報源へのリンクも提供する。図書館は、利用者自身がその学術的・知的なニーズを満たすことができるようにするため、情報リテラシーおよび情報マネジメント教育等のサービスを提供する。図書館は、可能な限り学外の利用者にもその資料とサービスを提供する。

 図書館は、高いスキルを持つスタッフにより、自らの革新を求め、ふさわしい技術を取り入れ、有意義なパートナーシップを築き、そして積極的によりよい図書館を目指す。

マサチューセッツ工科大学 5)
http://libraries.mit.edu/about/mission.html
Home > About Us
『Mission』
MIT 図書館群は研究、学習における創造的なパートナーです。
私たちは、MIT の教育・研究に関する情報資源を選定、整理、提供、保存します。
私たちは、国際的に評価されるこれら情報資源を維持し、現在そして未来の学術研究コミュニティのために質の高いサービスを提供します。
私たちは、これらの情報資源どうしを知的に結びつけるとともに情報の有効な活用についてMIT構成員を教育します。
私たちは、MIT 構成員が情報を必要とした時、まず思いつく場所となることを目指します。
-1999 年2 月

カリフォルニア工科大学
http://library.caltech.edu/about/default.htm
Home > About the Library
『CLS Mission Statement』
カリフォルニア工科大学図書館システムは、大学の教育・研究プログラムを支援し促進するため、求められる時に最適なコストで、図書館資料と最上質の先進的情報サービスを提供する。
『CLS Vision Statement』
我々はカリフォルニア工科大学の学術的・科学的優位性に不可欠な、活動的かつ利用者指向の組織である。

ノースウェスタン大学
http://staffweb.library.northwestern.edu/admin/stratp2000.pdf
Home > Library Administration > Selected Publications
『Strategic Plan, Fiscal Year 2001-2003』
「Mission Statement」
ノースウェスタン大学図書館の使命は、大学の教育・研究・専門・運営の各プログラムを支え向上させるため、情報資源と最上質のサービスを提供することである。図書館は、自立した学習へ導く環境および資料を図書館内および全学の利用者さらには学術コミュニティ全体に提供する。
図書館は、環境の激変の中、大学と情報の結合に指導的役割を果たすことで、利用者の要求に応えることを表明する。図書館は、情報資源に関する選定・整理・アクセス手段提供・保存および活用のための利用者教育における革新的な戦略を構築する。そのため、利用者と必要とする資料とを結び付けるために、図書館外部との有効なパートナーシップを築く。
「Vision」
(以下略)

ノートルダム大学
http://lib.nd.edu/aboutlib/mission.shtml
Home > University Libraries > About the Libraries
『Mission and Vision of the University Libraries of Notre Dame』
「Our Mission」
ノートルダム大学の情報資源において主要な位置を占めるものとして、以下により大学の目的に貢献することをノートルダム大学図書館群の使命とする。
1. どこであっても情報資源へのアクセスを提供する。
2. 授業・研究・サービスの支援に必要な図書館資料を形態の如何に関わらず収集する。
3. 図書館の重要なコレクションとユニークな資料を未来の学問のために保存する。
4. 所蔵しない情報資源への適切なアクセスを保証するため広範な協力プログラムに参画する。
5. 図書館の資料と機能のため、また図書館の情報資源とサービスを利用する人たちのために図書館施設を望ましい状態に維持する。
6. 情報資源の特定と効果的な使用に関して、教員・学生・職員を教育し、また支援する。
7. 大学の目標の追求のため、学術資源マネジメントと情報技術の活用において、他部門との協調のもとにリーダーシップを発揮する。
「Our Vision」
(以下略)

ブラウン大学
http://www.brown.edu/Facilities/University_Library/MODEL/SPSC/index.html
Home > More > library departments & staff > strategic planning
『A Strategic Plan for the Brown University Library』
「Our Mission」
 ブラウン大学図書館は、最新の情報と学術的記録の身近な保管庫として、またそれらへの主たる入り口として、教育・研究という大学の使命を支援します。そのために図書館は、第一には現在および未来のブラウン大学の学生と教員のためのコレクションであり伝達者でありそして教室であって、加えてその他の大学関係者、地域および国内外の学習・研究コミュニティのためにも貢献するものです。
「Our Vision」
(以下略)

ミネソタ大学
Home > About the Libraries > Vision and Mission Statements
『Vision and Mission Statements 』
「Vision Statement」
ミネソタ大学図書館群は、高品質な情報への迅速なアクセスにとって、ミネソタ大学おける第一の選択肢である。
知的かつ革新的でサービス指向の図書館職員は、
・情報に関する資源とスキルを大学の教育、研究、サービス全般の使命に融合させる。
・ユニークなデジタル資源、サービスを開発する。
・経済的に持続可能な学術コミュニケーションの創造に共同する。
「Mission Statement」
図書館の使命は、現在と未来の利用者のため、人類の思考・知識そして文化の記録へのアクセスを整備し、またこれを保存することである。図書館は、コレクションの構築・サービスの提供・情報技術の創造的な応用によって、研究と発見・教育と学習・福祉と公共サービスという三つの組み合わせからなる大学の使命を支援する。
「Values」
(以下略)

ライス大学
http://www.rice.edu/fondren/info/history.html
Home > General Info > History of Fondren Library
『Mission Statement』
 ライス大学フォンドレン図書館の使命は、文学・科学・芸術分野の発展およびすべての活動における卓越性の追求のため、学部および大学院教育に強力に参画することによって、大学の教育・研究・公共サービスプログラムを支援することである。フォンドレン図書館のコレクションとサービスは、図書館は単なる本のコレクションではなく、新進および名声ある学者が、情報を手に入れまた学びや創造の試みへと導く環境の下に集う場所として、その知的なスタッフおよび先進的情報技術と合わせて大学にとっての不可欠な資源である、という理念に基づいている。

カーネギー・メロン大学
http://www.library.cmu.edu/Libraries/sp.html
Home > Libraries and Collections > Strategic Plan
『University Libraries' Strategic Plan』
「Vision」
 カーネギー・メロン大学図書館群は、大学コミュニティの情報に対する現在のそして絶えず変化するニーズに対して、機敏に応えることができるように策定された、創造的、専門的な、また先進情報技術によるサービスを提供する。
「Mission」
・大学における教育、研究、芸術的および学術的な試みを支援し、これに貢献すること。
・情報資源のもっとも効果的な利用のため、これを収集・整理し、利用可能にし、維持・保存すること。
・図書館サービス、図書館資料、そして遍在する情報へのアクセスに関する知識を育て、広めること。

ワシントン大学
http://library.wustl.edu/about/vision.html
Home > About the Libraries > Library Vision, Mission, and Goals
『WU Libraries Vision, Mission, & Goals』
「Vision」
私たちはこんな図書館にしようと考えています。
・すべての図書館活動の中心に利用者を据えて、大学構成員の様々な要望と期待に迅速に応えます。
・誰にとっても魅力的で居心地がよく使いやすくて安全です。
・図書館の内と外のどちらにも豊かな情報資源とコレクションを持ちます。
・共同的で革新的な教育・学習・研究環境をともに構築します。
「Mission」
ワシントン大学図書館群の使命は、大学コミュニティ全体に対し、必要なときに効率的な情報アクセスを提供することで、大学における学習・教育・研究そして創造の発現を支援することである。
「Goals」
(以下略)

ラトガース大学
http://www.libraries.rutgers.edu/rul/about/about.shtml
Home > About the Libraries
『Mission Statement』
ラトガース大学図書館群は、ラトガース・ニュージャージー州立大学における研究および教育プログラムにとって不可欠な存在である。
図書館は、大学における情報リテラシーと学術コミュニケーション活動を先導する、サービスと学習のための組織である。
図書館は、ラトガース大学の学生や教員、ニュージャージー州住民および学術コミュニティ全般に対し、知的探求や知識の創造そして生涯学習を支援するために学術情報資源へのアクセスを提供する。

ピッツバーグ大学
http://www.library.pitt.edu/uls/
Home > University Library System
『University Library Sysytem Mission Statement』
ピッツバーグ大学図書館システムの使命は、教育・学習・研究・創造・地域サービスおける大学の先導的目的の達成にとって不可欠な情報資源へのアクセスを提供し促進することであり、また効果的な情報・教授・学習システムの開発において共同することである。
『University Library Sysytem Quality Service Commitment Statement』
(以下略)

アリゾナ大学
http://www.library.arizona.edu/library/teams/slrp/00_01VMP.html
Home > Library Information > Mission, Vision and Current Situation Analysis
『Mission(revised Jan 2002)』
生涯学習の能力と継続教育の成果の向上を図るため、アリゾナ大学図書館は、自由かつ開かれた探求の環境、そして自らの卓越性の表明を持って、学生・教員・職員およびその他利用者のあらゆる教育・研究のニーズに応えることに専心する。

オックスフォード大学(ボードリアン図書館)
http://www.bodley.ox.ac.uk/mission.html
Home > Reports and Policies > Mission Statement
『Mission and Objectives』
「Mission」
図書館の使命は、現在そして将来において、オックスフォード大学および国内外の学術コミュニティの教育・研究のニーズを支援するため、コレクションとサービスを維持し構築することである。この使命を実現するため、図書館は常に次の事項を目指す。
(a)現在の利用者および潜在的利用者のニーズへの理解を育て持続し、そしてこれに応える。
(b)必要なコレクションおよびサービスを構築し、これらへのアクセスを提供する。
(c)未来の利用者のためにコレクションを保存する。
(d)すべてのスタッフについての適切なスキルとモチベーションを開発する。
(e)財政的継続性を確保する。
(f)カレッジを含む他の大学組織との良好な関係を強化する。
(g)オックスフォードおよび全世界の図書館と協力する。
(h)以上の目標を達成するため、すべての分野において、テクノロジーの可能性を活用する。

シェフィールド大学
http://www.shef.ac.uk/library/libdocs/indexsp.pdf
Home > Documentation
『New worlds of information : The Library Strategic Plan 2002/2003 - 2004/2005 』
「Mission statement and objectives」
 大学の使命は、スタッフが学術的探求の最先端で研究をし、また研究的環境の中で学生教育が行われるよう、研究指向大学としてもっとも優れた基準を維持することである。
図書館の役割は、研究・学習・教育のために大学構成員が必要とする情報資源へのアクセスを提供することである。
図書館の主要な目標は次のとおりである。

(以下略)
ポーツマス大学
http://www.libr.port.ac.uk/policy/mission.html
Home > Library Policy
『Mission Statement & Strategic Aims』
「Mission Statement」
図書館は、大学の総合的目的および目標を支援するため、ミッションステートメントと戦略計画によって具体化されるところの統合的図書館・情報サービスを提供する。コスト面の有効性に充分配慮しつつ、図書館は利用者の要求に機敏であり続けるとともにサービスの開発およびニューテクノロジーの活用に積極的に取り組む。
「Strategic Aims」
(以下略)

香港工科大学
http://library.ust.hk/info/mission.html
Home > About the Library
『Library Mission』
大学の教育・研究プログラムを支援すること。
香港工科大学の学生へ一般教育を提供し、これを推進すること。
情報の共有と交換において、香港および地域の発展に寄与すること。

1) 東北大学 <http://www.library.tohoku.ac.jp/pub/future.html>
山梨大学 <http://www.lib.yamanashi.ac.jp/concept.htm>
信州大学 <http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/kashin10/kashin102.htm>
山口大学 <http://www.lib-c.yamaguchi-u.ac.jp/rinen/rinen.html>
<http://www.lib-c.yamaguchi-u.ac.jp/jikoten/>
2) 『21 世紀の大学像と今後の改革方策について』
< http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/daigaku/toushin/981002.htm>
3) 企業におけるミッション・ステートメントの例については、パトリシア・ジョーンズ他
『世界最強の社訓』講談社, 2001
4) MIT の図書館運営については、呑海沙織「マサチューセッツ工科大学の図書館運営」『図書館雑誌』95(2):2001.2

[URL はすべて2002年11月5日に確認]

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『Defiled』観劇記?

「大学の図書館」24(9)(2005/9)掲載

 「目録カードが廃棄されるのに抗議する司書が、爆発物とともに図書館に立てこもった・・・。」 これは、図書館を舞台にした劇、『Defiled』のお話。どうにも図書館員ウケのするストーリーに惹かれて、昨年暮の大阪公演へ行ってきました(再演。日本初演は2001年)。青年司書を演じるのは大沢たかおさん、彼を説得しようとするベテラン刑事役が長塚京三さんという、二人芝居です。
 「上司が今どきの図書館を目指して、コンピュータを導入することに決めた」ので、目録カードは、捨てられることになったとのこと。「カードよりコンピュータのほうが本を探しやすいのでは」という刑事に、「そんなことはない。カードなら、タイトルや件名からも探せるのに」と司書。(・・・これ、"辞書体目録"とかいったな) さらに「アレクサンドリア図書館」、「活版印刷」、「DDC」などなどを持ち出して、カードの歴史的意義をひとくさり。(・・・図書館史の授業?!)そして「カードを捨てることは歴史も捨てるということ。そんな世の中では本もネットで読むようになって、図書館も消えてしまう」と訴えます。(・・・確かに電子ジャーナルもE-Book もあるよなぁ)。 一方、刑事とのやり取り中から、「屈折と鬱屈」を抱えた、司書の内面も見えてくる。(・・・お約束の図書館員像?) それでも会話を重ねる中で、二人は次第に互いを理解しあうようになっていく、わけですが、こちらは、頻出する図書館ネタに反応するうちに、意識は舞台を離れて・・・。

 アメリカの作家ニコルソン・ベーカーは、図書館が利用者用コンピュータを入れ目録カードを捨てることや、古い図書を廃棄したことに対し、抗議活動を展開した。彼が訴えたのは、目録カードへの懐旧ではなく、「図書館に蓄積された歴史」を図書館員自らが捨てさってしまうことだという※。もちろん、様々な制約の中にある図書館は、すべてを残すことはできない。そして、「提供」する組織である以上、社会に寄り添って、より早く便利な手段を追求するのは、当然のことである。いまさらカード目録の時代に戻ることはできないし、多くの利用者は、電子ジャーナルがあれば、図書館で冊子を繰りはしない。だが、一方、「保存し伝える」役割も担うことが、図書館を他の組織と区別できるようにしているのは、確かだろう。
 さて、ベーカーは、図書館が「過去」を捨てることを批判した。では、図書館は「現在」を保存できているのだろうか。仮に、目録にも載らぬまま、研究室の片隅に埋もれる本や、図書室の書架の端に並ぶ雑誌があるとする。それらは、現在は不要なのかもしれない。だが10 年後の学生が、その本を開くことはないだろうか?100 年後に、その雑誌が残っていたらどうだろうか?
 今日、少なからぬ情報が電子的に存在している。「立てこもり司書」の言うように、図書館が消えるかはともかく、電子化の時代に、図書館こそ果たす役割は、「保存し伝える」ことだろう。例えば、「機関“リポジトリ”(=貯蔵所)」と図書館を繋ぐものがあるなら、それは、これまで紙の資料を残してきたように、電子資料も、保存し伝えるという図書館員のエートスではないか。ならば、図書館が媒体の如何を問わず、「現在」の資料を残すことを忘れるなら、その「未来」は危うい。

 ・・・そんなことにぼんやり考えを巡らせていると、舞台はもう終幕。説得は成功したのか?目録カードは守られたのか?? カーテンコールの歓声に手を振る大沢さんと長塚さん見ながら、思いました。(・・・図書館のことを考えながら芝居をみるのは、やめよう)

※「カレントアウェアネス」 No.267, No.272

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山行記録 飯野山

飯野山(讃岐富士) ’97.2.10
メンバー:赤澤
コース:三本松バス停 0:15 一王子神社 0:30 丸亀コース分岐 0:05 頂上0:05 丸亀コース分岐 0:20 坂出コース分岐 0:1 0山崎 1:45丸亀駅 [3:10]

 飯野山は、讃岐富士と呼ばれるその名に見合った均整のとれた姿で、讃岐平野の中に座っている。ここらあたりでは、ぽつんぽつんと独立した、ビュートと呼ぶらしい似たような山が多いが、その中で飯野山は群を抜いて美しい。瀬戸大橋を渡るたび、いつも眺めるばかりだったが、四国の友人宅を訪ねたのを機に登ってみることにした。

 朝一番の電車で善通寺をでて、本州へ帰る友人らと別れ、坂出で降りれば駅前にちょうどバスが待っていた。20分も走れば三本松の停留所。讃岐富士は目のまえだが、家並み越しに見るその姿は、どうしたことかあのプロポーションがくずれて、扁平なありふれた丘のように見えるではないか。とにかくも、バス道をしばらく歩き脇道へそれて登りロへむかう。神社の裏から、登山道に入れば等高線をまっすぐ突っ切るすごい急登である。ちょっとなめてかかっていたが、連続する階段状の登りにあっという間に息があがる。そのかわり、どんどん高さを稼いで、下の喧燥もいつしか小さくなってきた頃、ようやく山頂を巻くようにして、丸亀への分岐を合わせれば頂上である。誰もいない静かな頂には、小さな薬師堂や歌碑、おじょも(だいだらぼっちのような巨人らしい)の足跡のある岩なんてものまである。すこし下った展望台へいってみると眺めがひらけ、点々とため池が光るむこうに、昨日、金比羅さんから歩いた大麻山が正面に見える。お堂のノートに来訪のしるしを残して、山頂をあとにする。帰りは、丸亀コースをとる。こちらのルートは、車も通れるんじゃないかというくらいの広さで、山体をぐるっと巻いて展望を楽しみながらの緩やかな下りである。坂出コースの分岐点で折れるように曲がってしばらく行けば、高台の住宅街にでる。神社の脇を抜けて、高速道の高架をくぐれば山崎の停留所。もともとあまり当てにしてなかったが、バスはとうぶん来ない。どこかの駅につけばいいやと適当に方向の見当をつけて歩き出す。はじめは宇多津にむかっているつもりだったが、道路標識が丸亀を指すようになる。やがて、遍路道の道しるべがあらわれだし、それをたよりに丸亀駅についたのは昼も近く。帰りの電車の窓から望む飯野山は、いつもの讃岐富士の秀麗さを取り戻していた。

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山行記録 諏訪山

諏訪山 ’97.6.7

メンバー: 藤田 森 赤澤
コース: 浜平鉱泉 1:25 湯ノ沢ノ頭 0:45 避難小屋 0:30 三笠山 0:20 諏訪山 0:20 三笠山 0:20 避難小屋 0:30 湯ノ沢ノ頭 0:55 浜平鉱泉  [5:10]

 上信国境のぶどう峠をこえ、山深い神流川の谷間に浜平鉱泉を目指す。車をおり、このあたりかと見回しても目につくのは、川向こうの古ぼけた一軒家ばかり。とにかくも、欄干に洗濯物のかかった小さな橋を渡って、その家へ。玄関をあければ、そこはいきなり居間で、お爺さんが炬燵にあたっている。いちど戸を閉めて考えたが、やっぱりここが、今夜の宿、浜平鉱泉奥多野舘なのであった。かなりの年と思われる夫婦が二人だけでやっておられ、ほかにいるといえば猫が3匹ほど。急な階段を上がった二階が客部屋となっている。どうやら今晩の客は我々だけらしい。下で夕食の用意がされているようだったが、やがて上まで運ばれてきた食事は、食べきれぬほどの品数である。こういうのをほんとに心尽くしというんだろう。そろそろ満腹になってきた頃、飼い猫の一匹が卓の上からおかずをさらっていくのもご愛敬だ。風呂は、最近とんと見なくなったまるい木の湯船。一人入ればいっぱいで洗い場もない。鉱泉はお爺さんが沢から汲んでくるようだ。ちかごろ、秘湯ブームとかでどこへいっても小奇麗な宿ばかりだが、こんなところこそを秘湯というんじゃないだろうか。一度は泊ってみるべきところだと思うんですけどね。
 山の話も書かねばならない。翌朝、早くに用意してくれた、またしても豪勢な朝飯をなんとか腹におさめ、宿の裏から湯ノ沢をつめていく。早朝の沢すじはまだ薄暗く、なんだか、湿っぽい雰囲気だ。水が涸れると源頭部で、そこから尾根をつき上げて稜線にでたところが、湯ノ沢ノ頭。ここから気持ちのよい尾根どうしのみちで、アカヤシオというのか、淡紅の花が、日を透かした木々の葉のライトグリーンに映えて美しいのをところどころに見てゆく。やがて、避難小屋を過ぎるとはしごも現れる岩尾根となる。展望のよいピークにでたので、諏訪山かと思ったが、これは前衛の三笠山。見えるは緑深い山また山の連なりばかりである。諏訪山は目の前だが、いちど、岩稜を下って登りかえすので楽ではない。息をあげてたどりついた頂は、樹林のなか、山名を記した表示があるばかりの静かなところだ。来た道を取って返す。湯ノ沢ノ頭で一息ついて下れば、日も高くなって湯ノ沢も朝とは別の顔をしているようだ。登ってきた2人づれの女性が、今晩の宿なのだろう、「浜平鉱泉、どうでした」、と聞いてくる。「いや、よかったですよ」と答える藤田さんの意味ありげな笑みに何を感じたか、やっぱりやめておこうか、と相談するのを背中にきいて歩をすすめれば、じきに奥多野舘の屋根がみえて来るのだった。

藤田さんの諏訪山山行記録文

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大学出版部と大学図書館

 「大学出版」64号(2005/3)掲載 

 学術情報は、「著者(生産)→出版者(編集による価値付与)→図書館(収集・蓄積・提供)」を循環する、「円環」を成してきた。今、大学図書館は、電子化とネットの広がりによる、学術情報流通の変化の波に洗われている。その中にあって、円環における近しい隣人として、大学出版部と大学図書館の関係は、どう描かれるのであろうか。

 20年近く前、アメリカ図書館協会の機関誌に掲載された“University Press and Libraries”という特集に、ある出版人が、ファンドの減少など大学出版部を巡る状況を語る一文を寄せている。そこで図書館との関係は、 ‘Reaching Library’という一節で、マーケティングの取り組みの対象として、述べられる。誤解を恐れずに言えば、確かにこれも、「出版する側と購入する側」という、大学出版部と大学図書館の関係の一面には違いない。その論は、テクノロジーの進展によって、大学出版部と図書館に新しい関係がもたらされる可能性に触れて、終わっている。
 近年、アメリカでは、大学出版部と大学図書館の協働によるプロジェクトが、いくつか見られる。例えば、コロンビア大学出版局と図書館員の運営による、国際問題関係の会議録や書籍の全文を提供する“CIAO(Columbia International Affairs Online)”、ジョンズ・ホプキンス大学の出版局と図書館が共同で、人社系中小出版社のジャーナルを電子化している“Project MUSE”などである。また、歴史学分野の電子出版・アーカイブ“History E-BookProject”の審査委員会には、研究者、編集者とともに、図書館員も参加しているという。学術情報流通の変化をもたらした「電子化」は、また、20年前の可能性を現実のものとして、「売る側と買う側」の関係を越えた、大学出版部と大学図書館の新たな関係のキーともなっている。

 では、日本の大学図書館における「電子化」は、どのような状況にあるのだろうか。図書館の電子化は、80年代からの目録など従来のサービスのコンピュータ化に始まり、90年代半ば以降からの貴重書等の電子化、そして2000年頃からの電子ジャーナルの急速な普及を経て、今に至っている。そうした中、今後の電子図書館像を「情報の発信者(生産者)と受信者(利用者)を結ぶ付加価値を持ったインターフェイス」として、その方向性を唱導するレポート、『電子図書館の新たな潮流』が、2003年に公表された。これにより、大学図書館の電子化の次なる指向を概観できると思われる。そこで、この報告書が示す、今後の電子図書館に求められる6つの機能を挙げておく。
(1)自大学で生産される電子的な知的生産物を収集・蓄積・発信する「学術機関リポジトリ」
(2)資料電子化の高度化と教育・研究との連携などによる電子化資料の利活用
(3)図書館サービスをウェブ上で統合的に提供し、パーソナライズ機能などを備える「図書館ポータル」
(4)インターネット上の有用な情報を評価・選択し、主題に基づいたナビゲーションを提供する「サブジェクト・ゲートウェイ」
(5)ネットワークを利用して、リアルタイムで調査・質問に対応する「同期型デジタル・レファレンス」
(6)利用者に、図書館利用法や情報探索法の自学自習機能を提供する「オンライン・チュートリアル」
 ところで、このような「電子図書館」サービスで先行しているアメリカの大学図書館では、図書館の利用傾向が変化しているという報告がある。ARL(米国研究図書館協会)の1991年からの統計によると、貸出数や対面レファレンスサービス数、館内利用数が減少傾向にあり、こうした傾向の背景には、電子化の進行があるという。電子図書館への指向は、従来の図書館像の揺らぎを伴っている。また、「電子図書館」の役割を演じるのは、ひとり、図書館だけとは限らない。先ごろ、Googleが公開した学術文献検索に特化する“Google Scholar”や、大学図書館の蔵書などを電子化し検索対象とする“Google Print”などのプロジェクトも、そうした可能性の証左といえるかもしれない。遠くない将来、「図書館」は、電子化の波の中に溶けていくのだろうか。それとも、あらたな像を結ぶのだろうか。いずれにせよ、電子図書館像の模索は、学術情報流通の円環の中に、図書館の立ち位置を求める試みであるといえるだろう。

 さて、図書館が提供しようとしている、電子図書館における「付加価値」は、情報の提供機能の強化、そして情報へのアクセス支援の機能として集約することができるだろう。これらは、図書館が以前から担ってきた、「情報の収集と提供」という機能の拡張ともいえる。ところで、ここでいう電子図書館の中に、情報を評価し再構成して公のものにする、「編集」という価値付与の機能は、含まれていない。もちろん、言うまでもなく、その役割は、従来出版が担ってきたものである。では、電子化の波の中で自らの立脚点を探るとき、「情報流通における付加価値」が、出版と図書館の共通の志向であるとするならば、ここに、協働の方向性を見出すことはできないだろうか。
 そこで、そのひとつの可能性として、『電子図書館の新たな潮流』にもあげられている、「機関リポジトリ」を考えてみたい。これは、学術情報をインターネット上で障壁なく公開することを企図する、「オープンアクセス」運動の中で、現在、注目されている取り組みである。これはまた、大学の生産物を公開するものとして、社会への説明責任の文脈の中にも位置づけられる。この機関リポジトリの課題の一つとして、搭載される情報の品質保証が指摘される。これは、それ自体に、搭載された情報の品質を担保する機能は持たないためである。よって、機関リポジトリが、学術情報流通の中において有効に機能するためには、インパクトのあるコンテンツが求められることになる。またそのことは、不可欠な「装置」として社会に認知されることと、表裏をなすものであろう。さてここに、機関リポジトリが大学内の知的生産物を対象とするという点から、その機能を介した、大学出版部と大学図書館の連携の一様態を見出すのは、飛躍が過ぎるだろうか。つまり、「「編集」により価値を付与されたコンテンツを「情報の収集・提供」の装置である機関リポジトリで、社会に発信する」というモデルである。

 最後に、大学出版部と大学図書館の関係を巡る問いに戻りたい。学術情報流通の変化の中、「円環」が再生するのか、それとも、消えていくのかは分からない。しかし、「電子化」をキーにした大学出版部と大学図書館の連携は、それぞれの機能の融合の先に、「円環」を新たな形として再構成する可能性もはらんでいるのではないだろうか。
(京都大学工学部・工学研究科電気系図書室司書)

参考文献

    * 土屋俊「学術情報流通の最新の動向――学術雑誌価格と電子ジャーナルの悩ましい将来」現代の図書館、四二巻一号、2004。
    * 鈴木哲也「大学出版部は存在意義を示せるか――京都大学学術出版会の取り組みから」情報の科学と技術、五三巻九号、2003。
    * 長谷川一『出版と知のメディア論――エディターシップの歴史と再生』みすず書房、2003。
    * Chandler B. Grannis. "New directions for university presses", Library Journal, 111(13), 1986.
    * 国立大学図書館協議会図書館高度情報化特別委員会ワーキンググループ「電子図書館の新たな潮流――情報発信者と利用者を結ぶ新たな付加価値インターフェイス」2003。《http://wwwsoc.nii.ac.jp/janul/j/publications/reports /73.pdf》(参照2005.1.10)

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